GLSEN

中高生による中高生のための自助団体作り

【訪問団体】

【団体概要】

GLSEN (Gay, Lesbian and Straight Education Network) は1990年に設立された団体で、性自認・性的指向にかかわらず安全な学校生活をすべての学生が送れるように活動しています。学校でのLGBTQに対する嫌がらせや悪口、いじめといったものを断絶するために注意喚起を行い、アライ・ウィークの開催や沈黙のGLSENの日というイベントを行ったり、学内のいじめ、嫌がらせに関する量的調査を全米の学校で実施、調査結果を公に公開しています。また、いじめに対応する方法について学生と学校職員のためのワークショップや専門能力開発トレーニングなどのプログラムも実施しています。

 

GLSENのNYオフィスに到着後、支部内を案内しいただきました。オールジェンダーバスルームももちろん完備です。

【アクティビティ】

本部スタッフ、支部スタッフ、ツアー参加者でテーブルを囲い、GLSENの活動内容の紹介、日本の現状説明、質疑応答やフリートークを行いました。会話のアイスブレークとして自分の呼び名と代名詞の紹介とニューヨークの印象を一言で各自発表しました。

【特徴】

GLSENの特徴として以下の三点が挙げられます。

 

1. 全米に40を超える支部があり、地域の特色に合わせてボランティアを動員して活動を行っている。

 

2. 活動は全て調査の結果に基づいて行われている。

GLSENが最初に活動を始めた時に、政府や行政にデータの提示を厳しく求められたことから、GLSENでは団体自ら調査を行い、支援や活動の必要性や意義を発信しているそうです。彼らの調査で最も重要な調査は二年ごとに発行される全国学校環境調査(National School Climate Survey)です。この調査はLGBTの学生の学校生活の実状を捉えた量的調査です。学内のLGBT支援の効果や、LGBT学生の抱えるいじめ以外の課題などが詳しく考察されています。

 

3. 国内、国外の他団体にも活動支援や情報提供を行っている。

上に述べたように、GLSENが行っている調査結果は公に公開されています。他のLGBTや教育団体にとっても非常に重要な情報やデータだからこそ、そして他団体との協力やタッグが大切であると考えているからこそデータを公開しているのです。また、調査の結果だけではなく講座やワークショップのノウハウやテキストなどの情報も他団体に提供・提携しています。日本ではNPO法人JASH日本性の健康協会にセーフスペースキットの情報を提供しているそうです。

【印象・感想】

データに裏付けられた文化や環境に適した戦略構築

 

GLSENのスタッフの皆さんはフリートークの際に、日本のLGBT支援の話を積極的に聞いてくれました。私たちの話に基づき、日米の学校の違いを比較、日本の中・高校は米国と比べて閉鎖的で学校外部とのつながりが薄いということを指摘してくれました。例えば、中高の授業や催しに外部からの講師や団体を招き入れにくいことや、学業や部活動以外で学生同士の他学校、他地域での交流が少ないことが挙げられました。そのため、LGBT当事者は孤立してしまっているのではないかとの考察でした。

 

米国では、学校でのLGBT学生や教師に対する差別が顕著なため、サポートの必要性が明らかです。そのため、LGBTであることをオープンにしている学生や教師がいたり、GSA(Gay and Straight Alliance/ゲイとストレート同盟)などの自助団体があり学校同士でのつながりが構築されていたり、彼らに対する保護法が制定されている州や学校もあるそうです。

 

そこで、GLSENのスタッフさんたちはLGBTに限らずに「いじめ」として問題に対応、データを集計し、取り組みを進めるのはどうかとのアドバイスをくれました。また、授業、部活動、そして塾や習い事と、自由時間が少ない日本の中高生のためにインターネットやSNSを活用し、孤独感や疎外感を感じているLGBT学生へのリーチアウトの方法を考えてみてはどうかとの助言もありました。そして後々は、日本の中高生たちがGSAのような自助団体を作り、ほかの部活動のように学校間・地域間で繋がり、またアライ・ウィークのような催しを行うことができれば、日本でも安心して学校生活を送れるLGBT学生が増えるのではないかということでした。

 

日本と米国では文化や価値観が異なる部分があります。二国間で、人権に対する価値観の違いも存在するかもしれません。もしかしたら、宗教や信条の違いも大きく影響しているのかもしれません。また黒人運動や同性結婚に関する動きのように米国には自らの権利を獲得・守るためには積極的に声を上げなければならなかったという歴史があります。そのことから、「日本と米国ではあまりにも文化や環境が違いすぎる」「これはアメリカだから通用するんだ」という意識が少なからず私たちの中にありました。しかし、GLSENのスタッフさんたちとの交流を通して、「文化」の違いで日米の問題を片づけてしまうのではなく、データと分析を基に、日本という土壌にあった戦略を考える必要があると改めて実感しました。(Kody)